建物を新築した場合、まず建物表題登記を申請し、その後所有権保存登記を申請するという流れになります。建物表題登記には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積に加えて、表題部所有者が登記されます。
この表題部所有者を間違えて、共有名義で建物表題登記を申請しなければならないところ、単独名義で申請してしまった場合、例えば、新築建物の表題部所有者として夫のみの名義で建物表題登記をした後、所有権保存登記をする前に、本当は夫と妻の共有名義であったことが判明した場合、真実と合致させるため、共有名義に訂正しなければなりません。
訂正をする方法は、下記の3つがあります。
1.表題部所有者の更正登記
所有権保存登記を申請する前でしたら、表題部所有者を単独名義から共有名義にする更正登記をする方法があります。この方法の場合は、登記簿の表題部所有者の欄に更正登記をした旨の記載が残ることになります。
2.建物の登記簿(登記記録)の閉鎖
次に、いったん建物の登記簿(登記記録)自体を閉鎖して、改めて建物の登記簿を作る方法があります。ただし、建物表題登記のみがされている登記簿(登記記録)を閉鎖できるのは、取壊しや不存在等の理由の場合に限られ、表題部所有者の誤りを理由に登記簿(登記記録)を閉鎖することは認められていません(滅失登記の申請ができません)。
そのため、まず単独名義(夫名義)の所有権保存登記を申請し、その後に所有権保存登記の抹消登記を申請する必要があります。これにより、建物の登記簿(登記記録)を閉鎖することができます。
※ただし、不動産登記法74条1項1号後段、74条2項に基づく所有権保存登記を抹消する場合は、登記簿(登記記録)は閉鎖されず、建物表題登記の表題部所有者の記録が回復されます。
3.所有権保存登記の更正登記
最後に、間違えて登記された単独名義の表題部所有者のまま、単独名義の所有権保存登記を行い、その後所有権更正登記で単独名義から共有名義にする方法があります。ただし、所有権保存登記と所有権更正登記の連件申請については、所有権保存登記が不実の登記として、受理されない法務局が存在しました。
総括として、上記の通り、登記事項を誤って申請してしまうと訂正手続が複雑になります。不動産売買の決済が迫り、時間的余裕がない場合は、各所の相談・回答も即時には得られないことがありますので、私自身も十分に注意してまいりたいと思います。